「野良猫に餌を与えるべからず」という張り紙がマンションのエントランスに貼ってあった。やはり苦情が来たか。ずっと管理会社に苦情は入っていたと思う。それが一定量超えてオーバーフローしたから今回とりあえず張り紙だけ貼っとこか、という管理会社の心理が手にとるようにわかる。たぶん、誰が餌をやっているか特定されているはずなんだよな。だけど、それを張って現行犯で捕まえるというわけではなく、絶対誰も従わないであろう張り紙っていう手段に「さすがうちの管理会社だ」という誇らしい気持ちすらある。
うちの管理会社は本当に面白い。数年前の冬にマンション共有部の電気がつかなくなった。なぜかエントランスや廊下が真っ暗になった。電気が消えてから2日目。仕事を終えて夜帰ってくると、100メートル以上手前から、真っ白に光り輝いている建物が目に入った。まぁ、それがうちのマンションだった。とりあえず、2日目になっても電気がつかなかったから、管理会社が急遽用意したのが、真っ白でビカァーーって感じの光がでるライト。工事現場とかで使うようなやつなのかな。多分ね、美術館から伝説の「ナイルの泪」と呼ばれる宝石がルパンに盗まれたときに、「逃げたぞー!探せー!」っていう感じで美術館の屋上から外を照らす、なんていうのサーチライトかな、あんな感じの強烈な光が出るライト。それをマンションの廊下の両端に置いてあるからもう、全ての色が白にとんでしまっていた。マンションの中にはいると目が痛くて、まともに開けていられなかった。そんな白の世界で、一人自分のやったことが誇らしいのか、「どうだ、お前らの闇を払ってやったぞ」っていう感じで、鼻息荒くスーツを来た管理会社の、多分新人の男の子が立っていた。誰が見てもいい感じのバカさ加減を感じられる男の子だった。
こんな管理会社。どうするのかな。野良猫どころか、鳥やたぬきにまで餌をやってるし、動物たちが安心して餌を食べれるように、わざわざ草を買ってシートをかけたところのシートを剥がして、すっかり草ぼうぼうにしたベランダ横のマンションの庭的ポジションのところから、大量の虫が飛び回っている。もうこのレベルまでなったら、「火」を使ってくる未来しか見えない。多分、彼らの発想だと、くさごと焼き払うくらいしか出てこないと思う。虫も退治し、猫やタチが隠れるスペースも潰す。今のシーズンくさは青々と茂っており、1年のうちで最も強いであろう夏。単純に火をつけるだけだと無理だろうな。おそらく、ガソリンを使うんだろうな。それで結局マンションごと燃えるんだ。その火をバックに誇らしく鼻の穴を膨らませているちょっと成長した誰がどう見てもバカを感じる男の子がスーツ着て立っている光景が見える。
今せっかくここで落ち着いて生活できている猫たちが急に餌をもらえなくなって、どこか別の場所に移動したりして、縄張り争いに負けて怪我したり、その地域の住民にいじめられたりすると可哀想なので、餌やりの人には節度を持って世話を続けていただきたい。