世界中で何人の人が夜空を見上げて星に願い事をしているだろうか。そして、その全ての人の目に、その光が映るだろうか。
夜、ベランダで洗濯物を干していたら、空に流れ星らしき光が走った。「あっ」という間に消えていった光に、願い事をする余裕はなかった。正確なところはわからないので、もしかしたら間違っているかもしれない、と前置きして、まず、「流れ星ってなに?」という話。流れ星は宇宙にある塵が地球の重力に引かれて大気の中に入ってくる。そこで、塵が燃え尽きる間際に発光するとかしないとか、とにかくそんな感じだったはず。そして、流れ星が消える前に願い事をすると、願いが叶うといわれている。
「星」なんていっても、実際は名もなき塵で、地球みたいに生物がいるような星ではない。塵だ。宇宙規模の塵なので、ものすごく大きいのだろうけど。大きいからといっても、塵にそんな力があるんだろうか。塵だよ。
とりあえず、今から、願い事をされる流れ星の気持ちを考えたいので、塵であろうと、「星」と書く。
流れ星。まさに今、自分の命が燃え尽きようとしている時に、なぜ見ず知らずの人間の願いを叶えなければならないのか。もしくは、この星は叶えてくれるというありもしない大きすぎる期待を背負わされなければならないのか。
もし仮に、星は自分の命が尽きる前に人間の願いを叶えることができる力を与えられているとする。まぁ、せっかくだから最後は「良いことをして終えたい」なんて思っていても、願い事の大半は欲の皮が突っ張ったようなものばかりだ。「金が欲しい」、「モテたい」、「明日会社が爆発しますように」というような感じ。「金がほしい」という願いに対して、『いくら欲しいの』、『通貨は何で欲しいの』、『現金?振込?、もしくは税金等支払い関係のものと相殺する?』なんて話を詰める間も無く自分は消えていく。
次に、星に人の願いを叶えるような力が備わっていない場合、無視しても差し障りないような願いの隙間から、まさに藁にもすがる人からの重い願い事が伸びてくる。刺さる。「ごめんよ、俺にそんな力はないんだ」なんてちょっとブルーな気持ちになって燃え尽きていかなければならない。俺が何をしたんだよ。最後の最後に、何でこんなちょっといたたまれない気持ちにならないといけないんだよ。そう思いながら光って消えていく。
星が人の願いを叶える力があるのかどうか、真相はわからない。が、どっちにしても、星に迷惑をかけているような気がする。
だけど、願うのはタダ。強欲な人間の願い事は、今日も重力を振り切って、大気の層を抜けて、星に届けられる。