花壇の花

マンションのエントランスを出たところに花壇がある。
花壇はあるが花はない。

花壇は1m × 1m くらいだろう。詳しくはないので大きいのか小さいのは、分からない。

そんな花壇に今年の夏、花がやってきた。春にタネをまいて、育った花ではない。文字通りやってきた。その現場を見た。
7月の半ば、昼ご飯を買いにマンションを出た。途中、母親と手を繋いで歩く幼稚園児とすれ違った。母親の手には、幼稚園で育てていたのだろう、花の咲いた植木鉢を持っていた。夏休みに入ったのか、後は家で育ててください、と持って帰らされたのだろう。私も食べもしないプチトマトを毎年夏に持って帰っていた。買い物帰り、マンションの花壇に先ほどの母子がいた。さっき手に持っていた花を植えている。勝手に植えているのか、管理人に話を通しているのかわからない。しかし、誰も使っていないのだからよかろう。

この母子、花を植え終わるとマンションのエントランスとは逆方向に立ち去った。マンションの花壇に花を植えていたので、勝手に住人だと思っていた。しかし、どうやら違うらしい。自分のうちでは何かしらの理由があり育てることのできない花を適当な場所に植えにきたのだ。もしかしたら、この近所に住んでいてこの花壇が使われていないのを知っていたのかもしれない。幼稚園からの連絡帳で夏休みに鉢を持って帰らなければならないと知った瞬間から、目をつけていたのかもしれない。

誰が世話をしていたのか、花は夏いっぱい咲いていた。夏も終わり秋を駆け抜けて冬になった。すでに花も枯れ、もはやいつも通りの土だけの花壇に戻った。その花壇にまた異変が起こった。まさに今日、あの夏の日と同じように昼ご飯を買いにマンションをでた。花壇の前を通り過ぎる時に、違和感を感じた。花壇はいつも通り土色一色で、色味だけでは普段と変わらない。しかし、土に変化がある。花壇手前の土がへこんでいる。奥側の土が盛り上がっている。アーチ型にこんもりと盛られた土に、棒切れがささっている。土を盛った時に、以前植わっていた植物の茎が地表に出たのではない。はっきりと木だ。その木の太さも、しっかりとあるメッセージを読み取ることができる太さだ。

誰が植えたかわからない花でも、キレイな花であればわざわざ掘り返す必要はない。だから、残ったのだろう。今回の盛り土は気味が悪くて誰も掘り返せないだろう。キレイではなくても、おそらく残るだろう。

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