「金が欲しい」と空の星に願う。おんぼろアパートの2階のベランダで、洗濯物の隙間から空を見上げて星に願う。くたくたに寄れたパンツの隙間越しに見られては、空のお星様も気分が悪い。だから、どんなに純真な私の願いだとしても、空からお金が降ってくることなんてない。その確率の低さは、「恐怖の大王が19年越しに空から降ってくる」のとタメを張るだろう。
ロマンチックな目で、空ばかり見ていると、そんな私を下から見上げている人がいたりする。パンツ姿で星を見上げるおっさんを目にして、「1日の締めがこれか」と肩を落とす。大変申し訳ない。肩と一緒に財布の中身も一緒に落としてくれればいいのだが、そんなことはない。
金が欲しいというが、そんなにたくさんを願っているわけではない。綺麗な女性を連れて、いい服着て、高い飯を食う、そんな贅沢ができるほどの金をくれとはいわない。いやできればしたいから欲しいのだが、今でなくてもいい。ほんの少しでいい。例えば、マッサージに行った時に、フットマッサージ30分3000円に、肩、首のオプション10分1000円を苦なくつけれる位くらいの余裕を財布に与えてくれればいい。今なんて、クイズで1000万円獲得の最終問題、2択で迷っている時に、自分の直感では”A”なのに、いまいち自分が信じられないので”B”を選択すべきかを迷っている時くらい、迷ってしまう。
世界で同じように願っている人の中では、中ランクくらいに入る質素な願いだと思う。「それくらいなら仕方なかろう」といった具合でいつか叶うこともあろうかと信じて、今日も、もう一度ベランダに出る。