臭撃

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うちの母親はタオルを集めるのが趣味だ。実家には大量のタオルがある。その中から使わなくなったタオルをよく送ってくれる。その時はタオルと一緒に靴下や肌着も一緒に入れてくれる。今年の10月くらいに例によって「タオルを送る」と連絡があった。タオルと一緒に、肌着と靴下も入れる、と。

時間は少し流れて12月25日クリスマスの夜の話。仕事から帰って部屋に入ると何か生物が腐ったような臭いがする。魚介系の腐臭だ。流しやゴミ箱をチェックしても、それらしきゴミはない。今の家に住んで約4年。台所や洗面所の排水溝はちょくちょく臭いので、それかとも思った。でも仮にそうだとしたら、この臭いはやばい。何かしらのタンパク質で構成されたものが詰まっている可能性があるということだ。確実に排水溝からの臭いが原因だと特定するために、部屋をもう一度捜索することにした。警察犬のように空気中に漂っている臭いの粒子をたどっていく。狭い部屋なので、即座に突き止めた。濃度が最も濃いところ。においを色で表すような装置をかざすと、そこだけが真っ赤に見えてもおかしくない所を発見した。

実家から送られてきた段ボールだ。蓋を開けると、もう疑いようがないくらい強烈な臭いがした。段ボールの一番上にはタオルが入っていた。その下に靴下、次に肌着という順番で入っている。1枚めくるごとに臭いはきつくなる。最後の1枚をどかす。荷物が送られてきた時の母親の言葉、「タオルと靴下と肌着を送るけぇね」を信じるならば、めくった先にあるのは、段ボールの底だ。ところが、まだ何か入っていた。どろっとした液状のモノが入っているビニール袋がそこにあった。もうここにきてすでに鼻、そして気分的には口、目、肌に至るまでが危険信号が上がっている。痛い、しみる、かゆい気がする。ビニール袋の中身は判別不可能だった。突き止めたって意味はないし、とにかくこの悪魔の液体をゴミ袋に入れた。これだけで終わりじゃない。段ボールの底にも悪魔液は染み込んでいた。段ボールも捨てる。段ボールをどかすと、その下に敷いていた新聞紙も汚染されていた。一つ動かすごとに驚愕を与えてくれる、素敵なクリスマスプレゼントだ。

壁がなくなって、臭いは部屋中に広がった。退出願うために、換気扇を回す。効果なし。寒かったが、背に腹は変えられない。新鮮な空気を入れて、汚染された空気を出すために窓を開けた。いくら換気をしても元凶を元から断たなければ意味がない。臭いの元は全て捨てた。さらに患部を含めかなり広い範囲にアルコールを散布して、除菌を試みる。それでも部屋から臭いは消えない。臭いが部屋に満ちているのか、もしくは私の鼻にそれが付いているのか、はたまた、幻覚ならぬ、幻臭かはわからない。とにかく臭い。部屋の空気をリフレッシュさせるような便利スプレーがこういう時に限ってない。120本余ってるところもあれば、欲しくても1本もないところもあるんだな、と思った。ないものは仕方がないので、これまた母親がなぜか送ってくる「木の棒を通して部屋にいい香りが満ちる」系のフレグランスを使った。爆心地を、まるで悪魔祓いでもするかのように、四角くフレグランスで囲む。

そこまでして、ようやく部屋のにおいが正常に戻った。しかし、今度は過剰に設置したフレグランスのせいで、おしゃれな雑貨屋さん風のにおいが部屋に満ちた。一面お花畑。これでもかというくらい至近距離で、名人が腕によりを掛けて育てた、香りの強い花の匂いを絶えず嗅がされているような状態。悪臭を払うために導入したフレグランスが今度は私に襲いかかる。害獣を退治するために、別のところから連れてきた動物が、害獣を退治した後に今度はその場所の生態系を破壊する。そんなよく聞く話を実体験しながら、今生活している。

ちなみに、ことの顛末を母親に話したところ、「何を送ったか覚えとらん。そもそも、あんたがちゃんと確認しとらんのが悪いんよ」だそうです。

           
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